
妊娠したことが分かり、日々大きくなっていくお腹を抱えながら、出産方法について悩んでいるママも多いのではないでしょうか。現在は出産方法も多様化し、自分自身や赤ちゃんにとってベストな出産方法を選ぶことができます。
なかでも自然分娩、無痛分娩、計画分娩の3つの出産方法を選択肢に入れて検討するママが多くいます。
この記事では、自然分娩、無痛分娩、計画分娩の違いや特徴、費用、リスクなどを比較しながら詳しく紹介します。合わせて、出産方法に悩むママにおすすめの選択ポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
出産にはいろいろな分娩方法がある
近年、医療の発達とともに出産は多様化し、ママや赤ちゃんにとってより良い方法を選択するようになってきました。ソフロロジーやフリースタイル出産など、その手法は多岐に渡り、なかには「どんな出産方法を選べばよいのか分からない」と悩んでしまうママもいるでしょう。大切なのは、それぞれの出産方法のメリット・デメリットを理解して、自分や家族、赤ちゃんにとって納得できる出産を迎えることです。
最初に、代表的な3種類の出産方法について、出産方法の詳細やメリット・デメリットを紹介します。
自然分娩
自然分娩とは、自然に陣痛が起こるのを待ち、重大な医療の介入を受けずにママや赤ちゃんの力で分娩することを言います。フリースタイル出産やソフロロジー、ラマーズ法、水中出産なども自然分娩に当たります。
自然分娩の場合も、会陰の裂傷などを防ぐために会陰切開などの医療的処置を行うことがありますが、会陰切開を行っても自然についた陣痛で経腟分娩(帝王切開以外の全ての分娩)を行えば自然分娩に分類できるでしょう。
何らかの問題で赤ちゃんの娩出が難しい場合、医療的処置として吸引分娩や鉗子分娩を行うこともあります。病院によっては、これらの分娩も自然に陣痛が始まっているのであれば自然分娩と分類することがあります。
メリット
自然分娩のメリットは、薬剤などによる副作用の心配がないことです。また、特別な医療を必要としないため、費用が抑えられる点もメリットに挙げられます。
デメリット
人間がもつ本能的な出産方法であるため、特にデメリットと言えるものはありません。
計画分娩や無痛分娩と比較するために敢えてデメリットを考えるのであれば、いつ出産が始まるのか分からないことや陣痛の痛みがあることが挙げられます。
無痛分娩
無痛分娩とは、麻酔による処置を行って分娩の際の痛みを和らげる出産方法です。完全に痛みがなくなる訳ではないため「和痛分娩」と呼ばれることもあります。
下半身に麻酔をかけて陣痛の痛みを和らげるため、意識を保ったまま娩出を迎えられます。
メリット
無痛分娩のメリットは、痛みの軽減と産後の回復の速さです。麻酔によって痛みが軽減されることで、痛みによる心身への負担を抑えることができます。痛みによる緊張や疲労が軽減されることで、産後の回復も比較的早いのが特徴です。
そのほかにも、麻酔を使えば痛みを和らげることができるという安心感をもって出産を迎えられることも大きなメリットと言えるでしょう。
デメリット
麻酔分娩のデメリットは、麻酔薬を使用することによる副作用や合併症が挙げられます。重篤な副作用を起こす可能性は限りなく低いですが、ゼロではありません。
また、麻酔をかけることで陣痛が遠のきやすく、結果として分娩にかかる時間が長くなってしまうケースも多くあります。体質によっては麻酔の効きが弱く、痛みを感じてしまうこともあるでしょう。
麻酔分娩は出産費用とは別に費用が必要なケースが多いため、出産にかかる費用の総額が比較的高額になってしまうこともデメリットのひとつです。
計画分娩
計画分娩とは、陣痛誘発剤などの処置を行って人工的に陣痛を起こし出産を促す方法です。
ママの予定などに合わせて行われるケースの他、ママや赤ちゃんに何らかの問題があり分娩を早めるべきだと医師が判断した際に行われるケースがあります。
メリット
計画分娩の際には、誘発処置を行う前に入院し、処置をしながら経過を見るためおおよその出産予定が立てやすいメリットがあります。特に、経産婦の場合は上の子どもを預ける手配をしやすいなどのメリットが大きいでしょう。
デメリット
計画分娩の場合も、薬剤などを使う副作用のリスクが挙げられます。また、陣痛を人工的に誘発するため、陣痛が始まっても子宮頸管が柔らかくなっていないなどのトラブルが起こりやすく、結果として出産にかかる時間が長くなることも少なくありません。
計画分娩や無痛分娩を選択している人の割合
分娩方法を選ぶなかで、他のママがどのような選択をしているのか気になる人も多いのではないでしょうか。
公益社団法人日本産婦人科医会の発表したデータには以下のものがあります。
【全分娩数に占める無痛分娩の割合】
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|
全体 | 5.2% | 5.0% | 5.9% |
病院 | 4.5% | 4.4% | 5.3% |
診療所 | 6.1% | 5.7% | 6.5% |
2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|
全体 | 7.1% | 9.6% | 11.6% |
病院 | 6.6% | 9.3% | 10.6% |
診療所 | 7.7% | 10.0% | 12.7% |
※出典:日本産婦人科医会|産科施設の立場から~日本産婦人科医会施設情報からの解析~
無痛分娩を選択する人の割合は年々増加傾向にあり、診療所にいたっては10人に1人が無痛分娩を選択していることがわかります。
日本では約10%のママが無痛分娩を選択していますが、アメリカ在住の日本人女性が無痛分娩を選択した割合は73.1%、フランスでは82.2%(2016年時点)と言われており、海外に住むママ達の多くは無痛分娩を選択しています。
先進国では無痛分娩が一般的な出産方法として浸透している背景もあり、海外に住む日本人のママも無痛分娩を選ぶ傾向にあるようです。
計画分娩に関しては参考となるデータがありませんでしたが、やはり上の子どもがいる経産婦の場合、陣痛がきた際に上の子どもの預け先を探す不安などがあるため計画分娩を希望する人が多いようです。
ただし、病院によっては医療の介入が必要な場合しか計画分娩を行っていないケースもあるため、計画出産で実際に出産した人の割合を算出するのは難しいでしょう。
自然分娩・無痛分娩・計画分娩のリスクを比較
出産方法を選ぶ際に最も重視すべきなのが、ママや赤ちゃんに対するリスク要因です。続いては、それぞれの出産方法で発生するリスクについて比較してみましょう。
自然分娩で考えられるリスク
自然分娩で考えられるリスクとして以下が挙げられます。
- 陣痛の痛みがトラウマになる(次回の妊娠に対して消極的になる)
- 痛みを強く感じた場合、強いストレスや血圧の上昇を引き起こす
- 分娩が長時間化した場合、産後も心身の負担を引きずった状態で新生児の育児が始まる
- 陣痛がいつ始まるのか分からず、上の子どもがいる場合にいつでも対応してもらえる預け先などを確保する必要がある
人間の本能的な出産方法のため、デメリットが最も少ない自然分娩ですが、計画分娩や無痛分娩と比較した場合にはさまざまなリスクが考えられます。
初産のママの場合は陣痛の痛みがトラウマになるリスクが最も大きいでしょう。最初から子どもは1人だけと計画しているならまだしも、2人、3人と子供をもつことを計画している場合、初産の痛みのトラウマから次の妊娠に消極的になるケースは決して少なくありません。
また、上の子どもがいる場合、いつ訪れるか分からない陣痛を待つのは日常生活に大きな不安やストレスを感じる人が多いです。実家を頼るのが難しい場合やパートナーの仕事の都合上、急に陣痛がきても対応が難しい場合など、上の子どもの対応をしてくれる人や預けられる施設を探すことに苦労するケースも多く見られます。
無痛分娩で考えられるリスク
無痛分娩で考えられるリスクとして以下が挙げられます。
- 出産費用が高額になる
- 麻酔による副作用や合併症のリスクがある
- 出産の長時間化
- 吸引分娩や鉗子分娩など医療の介入を必要とするケースが比較的多い
- 麻酔があまり効かなかった場合でも無痛分娩の費用は請求されることが多い
無痛分娩の場合、麻酔を使用することで副作用や合併症などのリスクを心配する人が多いでしょう。
麻酔による副作用 | かゆみ、発熱、血圧低下、頭痛、嘔気 |
麻酔処置による合併症 | 一時的な排尿障害、一時的な神経障害、局所麻酔障害、細菌感染、一時的な胎児の心拍低下 |
無痛分娩の際に心配される合併症については、極めて低い確率で起こるものと考えられており、ママや赤ちゃんの命に関わるリスクにおいては自然分娩の際のリスクと同等程度と考える意見もあります。
また、体質によっては麻酔が効きにくく、まだらに麻酔がかかったり一部の痛みだけが取れないケースも多く聞かれますが、痛みを感じても無痛分娩の施術を受けたことに変わりはないため医療費は請求されるケースがほとんどです。
無痛分娩といっても痛みを全く感じない訳ではないため、結果として「自然分娩を選んでいても、変わらなかったのではないか?」という思いが残る人も少なくありません。
計画分娩で考えられるリスク
計画分娩で考えられるリスクとして以下が挙げられます。
- 計画分娩をしたからといって必ず即日出産に至る訳ではない
- 費用がかかる
- 陣痛誘発剤による合併症のリスクがある
計画分娩を希望した場合、入院して陣痛誘発剤等の処置を行い陣痛を促します。しかし、効果の出方には個人差があるため、処置をして数時間で陣痛が始まる人もいれば、なかなか陣痛がつかない人もいます。
陣痛がついてもなかなか分娩に至らないケースも少なくありません。病院等の診療時間内に分娩に繋がる陣痛がつかなければ、処置をいったん中止して翌日に陣痛誘発剤の処置を再開するケースも多くあります。結果として2~3日、陣痛に苦しむケースもあり、心身ともに疲れ切ってしまうこともリスクのひとつとして挙げられるでしょう。
また、陣痛誘発剤を使用するにあたり、子宮に過度な不可がかかり子宮破裂などを引き起こすリスクもあります。発生する確率自体は極わずかですが、計画分娩を選択するうえで理解しておくべきリスクです。
出産方法を選択する際のポイント5つ
出産方法を選ぶ際には、それぞれのメリット・デメリットを十分理解したうえで以下のポイントについて考えてみるのがおすすめです。
ポイント1.産後の環境
出産後の環境を考慮して出産方法を選択するのもおすすめです。
上の子どもの有無やパートナーが産休を取得するかどうか、実家のサポートを受けられるか、予算内で利用できる家事外注サービスの有無などから、どのような出産方法がよいのか考えてみましょう。
ポイント2.健康状態
自分自身の健康状態から出産方法を考えることも大切です。出産前から体力に不安のある人や持病がある人の場合、医師から無痛分娩を進められることもあります。
また、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病など、なるべく早く妊娠を終了させる方がよい場合には、計画分娩を検討することも大切です。
ポイント3.痛みへの耐性
ママ自身が痛みを感じやすい場合は、無痛分娩を検討するのもよいでしょう。陣痛の痛みはこれまでの人生で感じたことのない痛みだと表現されることが多いです。一方で、「思っていたよりも痛くなかった」という人がいるなど、個人差が大きくみられます。
痛みを和らげることは悪いことではありませんし、日本産婦人科学会では「無痛分娩は胎児に悪影響を及ぼすものではない」と明言しています。
リスクを考えて躊躇する人もいるかもしれませんが、そもそも重篤なリスクに関しては自然分娩や計画分娩を含む全ての分娩で起こり得るものも多く、無痛分娩だけが突出してリスクが高いという訳ではありません。
陣痛の痛みを想像して出産前に不安を感じるようであれば、無痛分娩を選択して「痛くなったら麻酔で和らげてもらえる」という安心感を持って出産に挑む方がリラックスした状態で赤ちゃんを迎えられるでしょう。
ポイント4.前回の出産の状況
経産婦の場合、前回の出産の状況から出産方法を選ぶのがよいでしょう。
前回の出産で陣痛の痛みを強く感じたり、いきみを我慢できずに会陰裂傷などを引き起こしたりした人の場合は、無痛分娩を検討してみるのもおすすめです。痛みが和らぐことで、助産師の指示を聞きながら落ち着いて出産に挑みやすくなります。
また、前回の出産でペースが速く陣痛から出産まで極短時間で進んだ人や破水から先に始まった人の場合は計画分娩を検討してみてはいかがでしょうか。経産婦の場合は一般的に前回の出産よりもお産の進みが速い傾向にあります。
出産が破水から始まったり、陣痛の進みがあまりに早かったりすると、長子を預けるまでに出産が進んでしまうこともあるでしょう。場合によっては、自宅や移動中の車内などで娩出してしまう可能性もあります。
ポイント5.費用
費用によって検討することも大切です。
無痛分娩の場合、平均して自然分娩の費用+20万円前後の費用を必要とする病院が多いようです。計画無痛分娩を行う場合は、さらに陣痛誘発処置や入院費がかかるため、費用が高額になる傾向があります。
病院によっては、無痛分娩の合計費用が100万円近くなるケースもあるため、事前に各出産方法の費用を調べて比較検討するのがよいでしょう。
当院の出産費用の目安は以下のとおりです。
通常分娩(自然分娩)の場合 | 59万円(税込)~ |
無痛分娩の場合 | 通常分娩費用に加えて 初産婦の場合→+15万円(税込) 経産婦の場合→+10万円(税込) |
計画分娩の場合 | 通常分娩費用に加えて +4~6万円(税込) |
場合によっては帝王切開を選択するケースも
ママや赤ちゃんの状態によっては、外科手術によって赤ちゃんを子宮から取り上げる帝王切開による出産を選択することになるママもいるでしょう。帝王切開は基本的に医師の判断によって行われるもので、ママの希望で選択することはできません。
主に帝王切開は以下のケースで適用される出産方法です。
- 逆子の場合
- 双子や三つ子など多胎妊娠の場合
- 前置胎盤の場合
- 以前の出産で帝王切開による出産を行った経験がある場合
- 重度の妊娠高血圧症候群の場合
- ママに脳や心臓に関する持病がある場合など
上記のケースでは、手術日を事前に決定して行う予定帝王切開が選択されます。
さまざまな出産方法を調べ、検討しているママのなかには、予定帝王切開で出産することになりショックを受ける方も見受けられます。また、順調に妊娠期間を過ごし、理想の出産方法を選択していたママのなかにも、急遽状態が悪化して緊急帝王切開に切り替え出産する事になった方が数多くいます。
しかし、出産において何よりも大切なのはママと赤ちゃんが健康に出産を終えることです。どのような形であっても、ママと赤ちゃんが健康であり、元気な産声を響かせてくれることこそが、出産において何よりの理想であることをご理解くださいね。
ご参考までに、当院の帝王切開による出産費用の目安は以下のとおりです。
帝王切開の費用 | 68万円(税込)~ |
まとめ
今回は自然分娩、無痛分娩、計画分娩の3つの出産方法について紹介してきました。それぞれにメリット・デメリットやリスクがあるため、どの出産方法を選べばよいのか悩むママも多いでしょう。
困った時には、今回紹介した選び方のポイントを参考にして、産後の環境や健康状態、自分自身の気持ち、前回の出産状況、費用などの面から、自分に最も適した出産方法を検討してみてください。
