
出産にはさまざまな方法がありますが、自然分娩を選択する人に特に注目されているのがソフロロジー式分娩法です。お産時に陣痛の痛みでパニックに陥った時に、呼吸法を行い、赤ちゃんも痛いかもしれない、と思いめぐらせ、気持ちを落ち着かせ自分自身への働きかけによってスムーズで心地よい出産を行うソフロロジー式分娩は「幸せなお産を迎えられる分娩法」と呼ばれることもあります。
この記事では、ソフロロジー式分娩法がどのような分娩方法なのか解説します。合わせて、ソフロロジー式分娩法のメリット・デメリット、練習方法、音楽の選び方、ラマーズ法との違いなども詳しく解説します。
ソフロロジーとは
ソフロロジーと聞くと出産をイメージする方も多いかもしれませんが、実はソフロロジーは分娩方法に限定されるものではありません。
ソフロロジーとは、1960 年代にスペインの神経精神科医アルフォンソ・カイセドが開発した気持ちを落ち着かせるための技術です。
「調和した精神の研究」という意味を持つソフロロジーは 3つの言葉が語源となっているのが特徴です。
phren(フレン)=精神
logos(ロゴス)=学問
これらの語源から、精神を落ち着かせる技術であり、意識や精神について考える学問であると捉える考え方もあります。
ソフロロジー式分娩法とは
世界では、1970 年代初頭にフランスの産婦人科医ジャンヌ・クレフ医師がソフロロジーを分娩に用いるソフロロジー式分娩方を開発、導入しました。
精神を落ち着かせ穏やかで幸せな出産ができると謳われたソフロロジー式分娩法が日本に伝わったのは 1987 年のことです。日本ソフロロジー法研究会の初代会長である松永博士が、日本にソフロロジー式分娩方法を伝えたと言われています。
松永博士は従来のソフロロジー式分娩に改良を加え、より恐怖心や不安感を取り除く現代式のソフロロジー式分娩法を考案しました。松永博士が考案したソフロロジー式分娩方法は世界からも注目を集め、今や世界中の分娩シーンで用いられています。
ソフロロジー式分娩法とラマーズ法の違い
日本では、出産の際の呼吸法としてラマーズ法が広く知られています。同じく、呼吸方法を用いる出産方法としてソフロロジー式分娩法との違いが分からないという人もいるのではないでしょうか。
続いては、ソフロロジー式分娩法とラマーズ法の違いを解説します。
ラマーズ法とは
ラマーズ法とはフランスのラマーズ博士が考案した出産の際の呼吸方法です。出産の仕組みを学び、独特な呼吸法を行うことで自然な分娩を目指す手法として考えられました。
ラマーズ法は「心理的無痛分娩法」とも呼ばれ、出産の際の痛みは恐怖心によって増加するという考え方から、独自の呼吸方法によって痛みを引き起こす恐怖心を和らげ、痛みの緩和を図る呼吸方法です。
現代の自然分娩の基本的な呼吸方法として考えられていますが、実際にラマーズ法によって痛みが和らいだという産婦さんは多くないでしょう。それは、正しいラマーズ法が伝わっていない事やラマーズ法には分娩段階によって異なる呼吸方法などがあることを知られていないからです。また、陣痛の痛みから恐怖心が勝り適切なラマーズ法をできない妊婦さんが多いというのも理由のひとつと言えます。
本来、ラマーズ法は分娩の際に起こる痛みが発生する理由を学び、痛みを引き起こす反射経路を遮断する呼吸方法を適切なタイミングで行うことが求められており、いわゆる「ヒッヒッフー」という呼吸方法だけで行うものではないのです。
ソフロロジー式分娩法との違い
ラマーズ法とソフロロジー式分娩法は、考え方に大きな違いがあります。
ラマーズ法は痛みの元を辿り、痛みを緩和させることを目的として行う呼吸法ですが、ソフロロジー式分娩法では、精神を落ち着かせることで身体の緊張を防ぎ痛みを和らげます。
つまり、ソフロロジー式分娩法では痛みが和らぐことすら「精神を落ち着かせた末の副産物」と考えられるのです。ソフロロジー式分娩法は、痛みを和らげることだけを目的とするのではなく、母子にとって穏やかで幸せな分娩をすることを目的とします。
この点がラマーズ法とソフロロジー式分娩法の大きな違いと言えるでしょう。
ソフロロジー式分娩法の6つのメリット
ソフロロジー式分娩法にはさまざまなメリットがあります。
メリット 1.恐怖心や不安感を和らげる
ソフロロジー式分娩法を希望する場合、妊娠中からイメージトレーニングをします。トレーニングすることで、出産が始まっても恐怖心や不安感をコントロールして、穏やかな気持ちを保つことができます。
ソフロロジー式分娩法における自律方法は、出産に対してマイナスのイメージを強く持っている人にも有効と考えられ、分娩が怖いと思っている人ほどソフロロジー式分娩法について学ぶことが推奨されます。
メリット 2.緊張を和らげ痛みを緩和する
出産の際の痛みは陣痛による子宮の収縮から起こります。しかし、子宮の収縮による痛みに加え、恐怖心や不安感から起こる身体の緊張が痛みを増幅させることが分かっています。
ソフロロジー式分娩法では、独自の呼吸方法やストレッチによって精神だけでなく身体の緊張や不安感を取り除く手法があります。緊張が和らぐことで必要以上に感じていた痛みが和らぐ効果も期待できるでしょう。
メリット 3.体力の消耗を抑えられる
恐怖心、不安感、緊張感は、それだけで体力の消耗を促します。
ソフロロジー式分娩法ではこれらの負担を軽減することで体力の消耗を抑える効果が期待できるでしょう。特に、産後すぐにカンガルーケアをしたいなどのバースプランを立てている人には、体力の消耗を抑える効果が期待できるソフロロジー式分娩法がおすすめです。
メリット 4.赤ちゃんへ酸素を充分に送れる
出産はママと赤ちゃんの共同作業です。娩出の際にはママがいきむだけでなく、赤ちゃん自身も本能で体を旋回させながら産道を通る必要があるため、十分な酸素を送ってあげなければ苦しくなってしまうこともあるでしょう。
ソフロロジー式分娩法では、気持ちと体を落ち着けてしっかりと呼吸をするのが特徴です。ママが落ち着いて呼吸をすることで、赤ちゃんにも十分な酸素が送られます。ソフロロジー式分娩法によって娩出した赤ちゃんは、十分な酸素を受け取っているため血色のよい肌色をしていることが多いという声もあります。
メリット 5.産後の回復を早める
ソフロロジー式分娩法ではリラックスして出産を行うため、身体的な負担も軽減する効果が期待できます。分娩時の身体的な負担を抑えることができれば、産後の回復を早めることにも繋がるでしょう。
メリット 6.赤ちゃんへの愛情を育みやすい
ソフロロジー式分娩では、妊娠中から赤ちゃんの存在を意識したイメージトレーニングを行います。出産を赤ちゃんと共同で行うという意識が強くなりやすく、愛情形成に良い影響を与えると言われています。
ソフロロジー式分娩のデメリット
ソフロロジー式分娩にデメリットはありません。
基本的にイメージトレーニングや呼吸方法、ストレッチによって行うものなので、ママや赤ちゃんにとってデメリットになることはないでしょう。寧ろ、ソフロロジーの考え方を理解することで、産後鬱などを予防する効果が期待される程です。
デメリットがない以上、気楽に挑戦できるのもソフロロジー式分娩の魅力と言えるでしょう。
ソフロロジー式分娩法のポイント
ソフロロジー式分娩法には2つのポイントがあります。
音楽とイメージの連携
ソフロロジー式分娩法ではイメージが重要です。妊娠中から出産のイメージを何度も行い、実際に陣痛が始まった時にも落ち着いていられるようコントロール力を高めます。
この時、音楽をかけることが多いです。毎回同じ音楽をかけてイメージトレーニングを行っていると、実際に陣痛が始まった際に同じ音楽を聞くことで、反射的にリラックス状態を保てると考えられています。
呼吸方法の習得
ソフロロジー式分娩法では、恐怖心や緊張感を和らげると共に、赤ちゃんに十分な酸素を送り届けるために独特な呼吸方法を行います。適切な方法で呼吸することで、身体の緊張も和らぎ痛みの緩和にも繋がります。
呼吸方法は、妊娠中から何度も繰り返し行って習得する必要があります。
ソフロロジー式分娩法の呼吸方法
ソフロロジー式分娩法の呼吸方法には諸説ありますが、今回は特に基本的な呼吸方法を紹介します。ソフロロジー式分娩法を希望する人は、妊娠中から呼吸方法をよく練習しておきましょう。
【出産全体を通して行う】基本の呼吸方法
陣痛の始まりから出産全体を通して行う基本の呼吸方法のコツは、深く息を吸って長く息を吐くことです。
- お腹を膨らませながらゆっくりと息を鼻から吸い込む
- お腹をへこませながらゆっくりと口から息を吐く
練習する時には、立った状態や座った状態で行うと良いでしょう。お腹に手を当てながら練習すると、呼吸の際にお腹の膨らみやへこみが感じ取りやすくなります。
【陣痛が始まった時に行う】リラックス状態を作る呼吸法
陣痛が始まり、痛みを感じ始めたらリラックス状態を作る呼吸方法を行いましょう。リラックス状態を作る呼吸では、息を長く吐くことが重要です。ゆっくりと時間をかけて息を吐くことで体と心をリラックス状態に導きます。
陣痛の痛みを感じたらリラックス状態を作る呼吸方法を行い、痛みが遠のいたら基本の呼吸方法に戻しましょう。
- 自然に鼻から息を吸い込む
- 20~30 秒かけてゆっくりと息を口から吐く
息を吐く時は、30cmほど前に置かれたろうそくを吹き消してしまわない位の強さで息を吐くことがポイントです。息を長く吐くことで、次に自然と体は息を吸い込みます。
人の体は息を吸おうとすると、体や心の緊張が高まりやすくなると言われています。長くゆっくりと息を吐くことに集中することで、緊張を高めず自然に次の息を吸い込み、体と心をリラックスさせる効果が期待できます。
【痛みの位置が下がってきた時に行う】体の緊張を和らげる呼吸
分娩が進み、徐々に痛みを感じる位置が下がってきた時には、体の緊張を和らげる呼吸に切り替えます。体の緊張を和らげる呼吸では、深く呼吸した後に一度呼吸を止めるのがポイントです。
- 口から力強く息を吐き切る
- 素早く息を吸い込み、数秒間だけ息を止める
体の緊張を和らげることで、産道が柔らかく広がりやすくなる効果も期待できます。ただし、あまりに長い時間息を止めてしまうと逆に体が緊張してしまうため、注意してください。
【子宮口が完全に開いて赤ちゃんを娩出する時に行う】無理なくいきむ呼吸
いよいよ子宮口が開き切り、赤ちゃんを娩出する際には、しっかりと目を開いて旋回する赤ちゃんを手助けするように新鮮な酸素を送ることを意識しましょう。
- 口から深くゆっくりと息を吸い、同じくらいゆっくりと吐き出す
- 息を全て吐き切ったら、再びゆっくりと息を吸う
この際、たっぷりと新鮮な酸素を取り込むことで、赤ちゃんも旋回しやすくなるでしょう。
また、リラックスして呼吸を行うことで産道が柔らかくなり、赤ちゃんが出てきやすくなります。
呼吸をしながら会陰の緊張を緩めることを意識することで、会陰裂傷のリスクを軽減できるという意見もあります。あとは、助産師のアドバイスに従って自然にいきむようにしましょう。
ソフロロジー式分娩法の基本はあぐらの姿勢
ソフロロジー式分娩法では、出産の際の全ての段階であぐらの姿勢が推奨されています。あぐらの姿勢が出産時にさまざまなメリットをもたらしてくれるため、ソフロロジー式分娩法に限らず、どのような出産方法においても用いることができるでしょう。
- 子宮口が開きやすくなる
- 胸が開いて呼吸がしやすくなる
- 赤ちゃんが降りてきやすくなる
その他にも、あぐらをかく際には長内転筋や大内転筋、大殿筋といった股関節周りの筋肉を多く使います。妊娠中は運動不足から下半身の筋肉がおちてしまいがちです。ソフロロジー式呼吸法の練習をしつつ妊娠中からあぐらの姿勢をとっておくことで、出産に必要な下半身の筋肉を鍛えることにも繋がります。
ソフロロジー式分娩法には音楽が必要なの?
ソフロロジー式分娩法ではお産に対するポジティブなイメージが重要です。同じ音楽を毎回聞いてイメージトレーニングすることで、音楽とイメージが紐づけられ、陣痛などを感じても落ち着いてポジティブなイメージができるようになると考えられています。
特に初産の妊婦さんにとって、出産は未知の痛みを感じるものというイメージがあるでしょう。この恐怖のイメージを塗り替えるのは簡単ではありません。
精神をコントロールするための補助として音楽をかけることで、体と心が特定の音楽を聴いた時に条件反射でリラックスできる状態に移行できるようになります。
日本ソフロロジー法研究会では、独自の研究によって最もソフロロジー式分娩法に適した音楽を作成し、CD販売しています。どうしても音楽を選べないというのであれば、専用音楽なら間違いないでしょう。
まとめ
今回はソフロロジー式分娩法について解説してきました。適切なトレーニングや呼吸方法などでソフロロジー式分娩法を行った場合、痛みが約4割軽減するという意見もあります。
自然分娩をしたいけれど、お産が怖いという人はソフロロジー式分娩法を検討してみてはいかがでしょうか。ぜひ、ソフロロジー式分娩法で幸福に満ちた出産を迎えてくださいね。
