令和7年度から、65歳の方への帯状疱疹ワクチンの予防接種が、定期接種の対象となりました。
帯状疱疹は免疫力の低下により発症する為、加齢や自律神経の乱れ等といった要因により免疫力が低下する恐れのある50歳代以降、急激に発症リスクが上がります。
発症してしまうと日常生活に支障をきたすこともありますので、ワクチン接種等の事前の対策が大切です。
帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる、痛みを伴う皮膚の発疹です。過去に水痘(水ぼうそう)にかかったことがある方は、体内にある水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することにより発症します。
帯状疱疹の原因となる水痘帯状疱疹ウイルスは成人の9割以上が抗体を持っていることから、誰もが帯状疱疹を発症するリスクがあります。
帯状疱疹にかかりやすい年代
10歳代でもかかることがありますが、50歳代以降急激に増加し、とくに70歳代で多いと言われています。
帯状疱疹の患者の50%以上が60歳以上と言われ、80歳までに約30%の人が帯状疱疹を経験するという報告があります。
また、高齢になるほど女性の発症率が高いという報告が多いです。
更年期以降帯状疱疹が増える理由
帯状疱疹の主な原因は免疫力の低下です。加齢により免疫力が低下して発症します。また、更年期以降はホルモンバランスの変化から自律神経が乱れ、睡眠不足や疲労が重なることによりさらに発症しやすくなります。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹は、皮膚の痛みやかゆみがある病気です。帯状疱疹の症状は時間経過とともに変化します。
帯状疱疹は皮膚の症状が出る前の初期の段階では以下の症状がみられる場合があります。
- 身体の片方だけにピリピリとした、刺すような痛みがある
- 神経に沿った皮膚の痛みやかゆみ、違和感がある
- 熱がある
- リンパの腫れがある
その後、痛みやかゆみを伴う赤い発疹が出たり、水ぶくれやただれ、かさぶたが帯状にみられるようになります。
通常は2-4週間で皮膚症状は治りますが、痛みを伴うため、程度により日常生活へ影響が出る可能性もあります。
また、帯状疱疹を発症すると、皮膚だけでなく神経にも炎症を起こすため、痛みが現れ、皮膚の症状が治った後も痛みが続くことがあります。長期間痛みが残ることを『帯状疱疹後神経痛(PHN))』と言います。『突き刺すような痛み』『ズキズキする痛み』『焼けるような痛み』等、痛み方は人によって程度が異なります。
帯状疱疹の予防方法
帯状疱疹は免疫力が低下することで発症するため、日頃の体調管理が非常に大切です。適度な運動や睡眠をしっかりとるなど、規則正しい生活習慣を心がけましょう。疲れがたまると免疫力が低下するため、疲れを感じる前に適度に休息をとったり、ストレスをためないようリラックスできる時間を作ったりすることも大切です。
また、50歳以上の人は、帯状疱疹のワクチンの接種を受けることができます。
帯状疱疹ワクチンの種類と効果
帯状疱疹のワクチンは生ワクチンと組換えワクチンの2種類です。接種方法や持続期間などに違いがありますが、どちらのワクチンでも帯状疱疹やその合併症に対する予防効果は認められています。
当院で実施する予防接種では組換えワクチン(シングリックス)を使用します。生ワクチンの取り扱いはございません。
生ワクチン 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
組換えワクチン(不活化ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
|
---|---|---|
接種方法 |
皮下注射
|
筋肉注射 |
接種回数と間隔 | 1回 | 2ヶ月以上間隔をあけて2回 |
接種条件 |
病気や治療で免疫機能が低下している方は接種不可
|
免疫状態にかかわらず接種可能 |
生ワクチン、乾燥弱毒生水痘ワクチン、ビケン(阪大微研) | |
---|---|
接種方法 | 皮下注射 |
接種回数と間隔 | 1回 |
接種条件 | 病気や治療で免疫機能が低下している方は接種不可 |
組換えワクチン(不活化ワクチン)、乾燥組換え帯状疱疹ワクチン、シングリックス(GSK) | |
---|---|
接種方法 | 筋肉注射 |
接種回数と間隔 | 2ヶ月以上間隔をあけて2回 |
接種条件 | 免疫状態にかかわらず接種可能 |
ワクチンの予防効果
接種後経過年数 | 生ワクチン 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
組換えワクチン(不活化ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
---|---|---|
接種後1年 |
6割程度
|
9割以上 |
接種後5年 | 4割程度 | 9割程度 |
接種後10年 |
ー
|
7割程度 |
接種後経過年数 | 生ワクチン 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
---|---|
接種後1年 | 6割程度 |
接種後5年 | 4割程度 |
接種後10年 | ー |
接種後経過年数 | 組換えワクチン(不活化ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
---|---|
接種後1年 | 9割以上 |
接種後5年 | 9割程度 |
接種後10年 | 7割程度 |
帯状疱疹ワクチンの接種が推奨される人
ワクチンは50歳以上であれば任意で接種可能です。
65歳以上の方は令和7年4月1日より定期接種の対象となりました。
- 年度内に65歳を迎える方
- 60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
- 2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70・75・80・90・95・100歳となる方も対象となります(100歳の方は2025年度に限り対象)。
定期接種は自治体で実施されますので、実施できる医療機関や費用、申込方法などは各自治体に確認してください。
当院でも、50歳以上の女性を対象として、帯状疱疹ワクチンの予防接種を実施しております。下記リンクにて予防接種の詳細を掲載しておりますので、ご確認ください。
乳幼児と接する機会の多い人も要注意
帯状疱疹は体の中の水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症します。そのため、これまで水痘(水ぼうそう)にかかったことがない人やワクチン接種をしていない子どもと接する機会がある人はワクチン接種をおすすめします。
職業柄子どもに接する機会が多い方や、家族に小さな子どもがいる方は接種を検討しましょう。自分を守るためだけでなく、子どもや孫など大切な家族を守るためにもワクチン接種は大切です。
ワクチンの安全性
ワクチン接種後は副反応がみられることがあります。
それぞれのワクチンの副反応の出現頻度は以下のとおりです。
副反応の発言割合 | 生ワクチン 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
組換えワクチン(不活化ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
---|---|---|
70%以上 |
ー
|
疼痛 |
30%以上 | 発赤 | 発赤、筋肉痛、疲労 |
10%以上 |
掻痒感、熱感、腫脹、疼痛、硬結
|
頭痛、腫脹、悪寒、発熱、胃腸症状 |
1%以上 |
発疹、倦怠感
|
掻痒感、倦怠感、その他の疼痛 |
副反応の発言割合 | 生ワクチン 乾燥弱毒生水痘ワクチン ビケン(阪大微研) |
---|---|
70%以上 | ー |
30%以上 | 発赤 |
10%以上 | 掻痒感、熱感、腫脹、疼痛、硬結 |
1%以上 | 発疹、倦怠感 |
副反応の発言割合 | 組換えワクチン(不活化ワクチン) 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン シングリックス(GSK) |
---|---|
70%以上 | 疼痛 |
30%以上 | 発赤、筋肉痛、疲労 |
10%以上 | 頭痛、腫脹、悪寒、発熱、胃腸症状 |
1%以上 | 掻痒感、倦怠感、その他の疼痛 |
ワクチン接種ができない方
以下に該当する場合は、帯状疱疹ワクチンを受けることができません。
- 過去にワクチン接種でアナフィラキシーを起こした方
- 予防接種が不適当だと医師が判断する方
- 発熱している方
- 重篤な疾患にかかっている方
また、生ワクチンの接種の場合は病気の種類や治療の内容によってワクチン接種ができません。
ワクチン接種を希望される場合はかかりつけ医に相談してからワクチンを検討しましょう。
当院で実施している予防接種
当院では下記のように帯状疱疹ワクチンの予防接種を実施しております。
対象 |
さいたま市に住民登録があり、
|
---|---|
料金 | 組換えワクチンシングリックス使用 :18,200円(税込)/1回 |
接種間隔 | 初回接種から2ヶ月以上空けて計2回接種 |
持ち物 | 診察券(お持ちの方)、マイナ保険証(健康保険証)、本人確認書類(さいたま市の確認)、予診票(お持ちの方) |
予約方法 | Web予約が可能です。下記のボタンより予約ページへ移動できます。 |
帯状疱疹ワクチン接種に関するQ&A
帯状疱疹ワクチン接種に関するよくある質問について回答しています。
他に治療中の病気がある場合は、必ず事前にワクチン接種が可能か医師に相談してください。
また、ワクチン接種当日に発熱がある場合は受けることができません。ワクチン接種後は副反応がみられることがあるため、体調がいいときに受けるのが基本です。
体調に不安がある場合は必ず医師に相談しましょう。
帯状疱疹以外にもワクチン接種を検討している方や、他のワクチンを接種後の方は接種間隔をあける必要があるため、事前に確認しましょう。生ワクチンと不活化ワクチンによってどの程度期間をあけるかは異なります。
■生ワクチン
他の生ワクチンとは27日以上間隔をあけてください。生ワクチン以外には接種間隔に制限はありません。医師と相談して日程を調整しましょう。
■不活化ワクチン
他のワクチンと接種間隔に制限はありません。医師と相談して日程を調整しましょう。
予防効果は非常に高いですし、仮に発症したとしても症状が軽くなることが多いです。そのため、ワクチン接種の意義はあります。
まとめ
帯状疱疹は50代以降急激に増加する病気です。症状は軽度であれば数日で軽快しますが、発疹ができる場所や症状の程度によって日常生活に影響が出る可能性があります。
帯状疱疹はワクチンで予防できるため、ワクチン接種が可能な方はワクチン接種を検討しましょう。
とくに水痘にかかったことがある方や基礎疾患がある方は帯状疱疹のリスクが高いため、ワクチン接種の検討をするといいでしょう。
2025年以降、65歳以上の方は定期接種が開始されたため、自治体によりワクチン接種の一部金額が補助されます。対象者や助成金額は地域により異なりますので、必ず事前に確認してください。