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産前から産後で骨盤はどう変化する?自宅で出来るストレッチ等のケアもご紹介

医療法人みらいグループ
産前から産後にかけて骨盤はどう変化する?

「産後は骨盤が開くから、早めにケアしていた方がいいよ」と言われたことがある方もいるのではないでしょうか。
妊娠・出産は体に大きな負担がかかります。できるだけ体の状態を早く戻したいと考える方もいるでしょう。
この記事では、骨盤は産前・産後でどのように変化しているのか、また、自宅でできるセルフケアまでご紹介します。
正しい知識を得て、自分でできることから始めていきましょう。

妊娠・出産による骨盤と体の変化

妊娠中はさまざまな要因で骨盤と体が変化します。妊娠・出産により骨盤やインナーマッスル(体幹や骨盤底筋群)の機能が低下する理由を解説します。

1.出産に向けてのホルモン分泌

妊娠により、リラキシンというホルモンが体から分泌されます。このホルモンは骨盤周囲の筋肉や靭帯をゆるみやすくし、出産時に赤ちゃんが産道を通りやすいようにする働きがあります。
リラキシンは産後に分泌が止まりますが、出産によって産道は広がり、靭帯は伸び、これらのゆるみによって骨盤周りが不安定になります。
昔は和式トイレや階段での生活、布団の上げ下ろし、畑仕事など日常生活で骨盤が動く動作が多くありました。
しかし、現在では骨盤を動かすことが少なくなっているため、骨盤まわりの靭帯や筋肉が鍛えられずに、必要以上にゆるんでしまうことがあるのです。

2.妊娠や出産による腹筋の変化

正常な腹筋と腹直筋離開
妊娠によってお腹が大きくなる過程で、赤ちゃんのスペースを作ろうとし、腹直筋の離開が起こります。
腹直筋の離開はすべての人に起こるわけではありませんが、妊娠後期〜産後数ヶ月の人まで多くみられ、経産婦ほどなる可能性が高いと言われています。

3.妊娠による姿勢の変化

妊娠するとお腹がどんどん前に出てくるようになるため、バランスを取ろうと姿勢が崩れる方がいます。骨盤が前傾になったり、後傾になったりすることで、インナーマッスルが働きにくくなり、機能が低下し回復が遅くなる可能性があります。

妊娠・出産により起こりやすい体の不調

骨盤やインナーマッスルの変化、また、赤ちゃんの成長や母体の体重増加もあることから、妊娠中から産後にかけて、体にはさまざまな不調がみられます。
よくみられる不調やマイナートラブルは以下のとおりです。

  • 腰痛
  • 排尿障害(尿失禁・排尿障害)
  • 排便障害(便秘、便失禁)
  • 骨盤臓器下垂など

産後のマイナートラブルが起こる原因

妊娠中だけでなく、産後もさまざまなマイナートラブルが起こります。
原因は主に、分娩によるものと産後の育児に伴うものの2つです。

出産では、特に経腟分娩の場合、長時間におよぶ肛門周囲への圧迫による神経障害(排尿障害や排便障害)、また、分娩時の傷による不調も起こります。

そして、産後は育児が始まります。授乳やおむつ交換、抱っこなど、前重心の姿勢が増えることや、姿勢の悪化により、腹筋や骨盤底筋に負担がかかります。
また、疲労や頻回な授乳での睡眠不足、運動機会の減少により、筋力低下が起こることも、産後不調が悪化する要因です。

インナーマッスルの強化が重要

妊娠・出産では筋力が低下するという報告もあるため、不調を予防するためにも骨盤ケアやインナーマッスルの強化が大切です。
インナーマッスルは体の深い部分にあり、私たちが姿勢を保ったり、バランスをとったりするときに非常に大切な役割があります。

インナーマッスルは体の土台です。インナーマッスルが弱くなると、体の不調が起こりやすくなります。反対に、しっかり使えるようになると、体の負担が減ります。
インナーマッスルの中でも特に大切な筋肉は、以下の5つです。

  • 腹横筋
  • 横隔膜
  • 骨盤底筋
  • 多裂筋
  • 大臀筋

それぞれの筋肉の役割について簡単にご紹介します。

腹横筋

腹横筋
腹横筋はお腹を横方向にぐるっと覆うようにあり、お腹を凹ませる時に働く筋肉です。
コルセットのような役割があるため、腹横筋を鍛えることで、腰の安定性が高まったり、姿勢を保てるようになったり、腹圧を高めて排便時に力を入れやすくなったります。

横隔膜

横隔膜
横隔膜は胸とお腹の境目にある大きなドーム上の筋肉です。インナーマッスルのひとつとして腹圧をコントロールし、体幹を安定させる役割もあります。姿勢保持や内臓の位置を整えるためにも大切な筋肉です。横隔膜腹圧を一定に保つことで腰や骨盤にかかる負担を和らげます。

骨盤底筋

骨盤底筋
骨盤底筋は子宮や膀胱など、骨盤の下にハンモックのようにある筋肉です。骨盤内の臓器を支え正しい位置に保ったり、尿道や肛門をきゅっと締めて排泄をコントロールしたりするのに必要な筋肉です。

多裂筋

多裂筋
多裂筋は背骨など縦方向に伸びている筋肉で、前屈みになったり後に体をそらせたりする時に大切な筋肉です。
まっすぐな姿勢を保つために必要な筋肉です。

大臀筋

大臀筋
大臀筋はお尻にある股関節の動きを支える大きな筋肉です。大臀筋を鍛えることで、骨盤を正しい位置にキープしやすくなり、反り腰や猫背の改善につながります。

骨盤矯正は必要?

近年、骨盤矯正が産後早期に必要と言われていますが、骨盤矯正の医学的根拠はありません。そのため、骨盤矯正は必ずしも必要というわけではありません。
しかし、前述のとおり産後は骨盤周囲の筋肉や靭帯はゆるんでいるため、トラブルが起こりやすい状態です。

まずは骨盤矯正だけでなく、インナーマッスルを鍛えることが、産後のトラブルや不調予防や改善のために必要と言えるでしょう。

インナーマッスルは体の土台となる部分で、内臓の安定や姿勢維持、基礎代謝促進など、健康の基礎となる大切な筋肉です。
特に産後はヒップラインやぽっこりお腹が気になる方が多いでしょう。インナーマッスルを鍛えることで、正しい姿勢を保ちやすくなり、見た目の美しさにつながります。

自宅でできるセルフケア・運動

産前は大きなお腹を抱えての外出は負担が大きいでしょうし、産後も赤ちゃんのお世話に忙しく外出のハードルが高い方も多いでしょう。まずは、自宅でできるようなセルフケアから始めてみましょう。
ここからは、自宅でできるセルフケアや運動について解説します。

骨盤ベルト

骨盤ケアで代表的なものは骨盤ベルトでしょう。
骨盤ベルトは、腰痛や恥骨痛などの痛みの緩和や不調の軽減に使用されます。

骨盤ベルトの効果

骨盤ベルトの装着で期待できる効果は以下のとおりです。

  • 骨盤の安定
    ホルモンの影響や出産でゆるんだ骨盤まわりの靭帯や筋肉を骨盤ベルトでサポートすることで、骨盤が安定します。
  • 姿勢改善
    骨盤が安定し、正しい位置に戻ることで、姿勢改善の効果も期待できます。
    シャキッとした姿勢を保つことで、姿勢改善だけでなく、自然と筋肉も鍛えられ背中の痛みや肩こりなどの不調改善にもつながります。
  • 痛みの軽減
    腰痛や恥骨痛、股関節の痛みなど、骨盤が安定することで痛みの軽減につながります。
    骨盤が安定すると立ちあがりや歩行時などの痛みが軽減するでしょう。

骨盤ベルト使用時の注意点

骨盤ベルトは不調やトラブル改善に効果的ですが、正しく使用できていないと、他の不調につながる可能性があります。
そのため、以下の点に注意しましょう。

  • 正しい位置で装着する
    まず大切なことは正しい位置で装着することです。骨盤をしっかり支えられるよう、適切な位置で使用することが大切です。
    トイレや動作時にずれてしまうこともあるため、ずれてしまった場合は装着し直しましょう。
  • 長時間装着しない
    骨盤ベルトは基本的に日中装着し夜間や就寝中は外すようにしましょう。長時間装着せず、外す時間も作ることで、自然な動きも保てます。
  • きつく締めすぎない
    安定させるためにきつく締めすぎると血行不良や皮膚トラブルの原因になるため、適度な強さにしましょう。座っている姿勢できつくない程度の強さが目安です。装着時に痛みが出るようであれば少し緩めましょう。

トレーニング・ストレッチ

ここからは、自宅でできるトレーニングやストレッチといった運動方法をお伝えします。

骨盤底筋トレーニング

  1. 仰向けになり膝を立てて横になる
  2. ゆっくり鼻から息を吸い、口からふーっと細く長く息を吐き、息を吐くタイミングでぐっと肛門に力を入れる
  3. 息を最後まで吐き切る

まずは1日10回程度行いましょう。息を吸うタイミングで力を抜きリラックスすることがポイントです。立ったままでも、座りながらでも行えますので、ご自身のいいタイミングで行いましょう。

ブリッジ

  1. 仰向けになり膝を立てる。足の間はこぶし1.5個分あける
  2. ゆっくり息を吸う
  3. 息を吐くタイミングで下腹部に力を入れる
  4. お尻から少しずつ腰を持ち上げ、肩甲骨が離れない高さまで腰を持ちあげる
  5. 肩からお尻まで一直線になったら、腰が反らないように注意し5秒キープする
  6. 息を吸いながら背骨からお尻までゆっくりと腰をおろす

無理なくできる回数からはじめましょう。ポイントは肩甲骨が浮かない位置でキープすること、腰を反らさないことです。
腰を反っていたり、肩甲骨が浮いていると首や腰を痛める原因になりますので、注意しましょう。

股関節と前もものストレッチ

股関節と前もものストレッチ

  1. 仰向けに寝て、両膝を立てる
  2. それぞれ足首をもつ
  3. 片方の足を内側にゆっくり倒す
  4. 倒した足を元に戻すと同時にもう片方の足を内側に倒す
  5. 左右交互に1分程度行う

前ももがしっかり伸びていることを感じられたらOKです。足を内側に倒すとき床につかなくても問題ありません。
前ももが伸びていることを感じられる程度まで内側に倒しましょう。

骨盤ケアの注意点

骨盤ケアでも、とりわけストレッチなどの運動を始める際には、安全に行うため、以下の点に注意しましょう。

ケアを始める時期について

産前は、妊娠16週以降の体調が安定し始める時期が目安となります。ただし、母子の安全を第一に考え、医師と相談をしながら適切に行ってください。
産後は、身体が出産によるダメージにより非常に繊細な状態です。特に産後1ヶ月は身体の回復期にあたるため、産後検診が終わってから、医師の指示のもと始めましょう。帝王切開の方は、さらに期間が必要な場合もあるため、医師に相談しながら始めましょう。

正しい方法で継続してケアをする

運動やケアは日頃の積み重ねが非常に大切です。正しい方法でケアしないと、痛みが出たり、他の不調が出たりする可能性があります。
セルフケアが難しいという方は、骨盤ケアができる施設やサービスへ相談してみるといいでしょう。
費用がかかる場合もありますし、定期的な施術が必要というデメリットもありますが、セルフケアより効果的で安全に的確なケアが受けられるメリットもあります。

骨盤ケア以外に大切なこと

骨盤ケアを行うことは大切ですが、基本的な生活習慣の見直し、改善も非常に大切です。

  • 睡眠をできるだけ確保する
  • 栄養バランスのとれた食事を食べる
  • 休息をできるだけとる
  • リラックスできる時間をつくる

産前であれば身体の変化・負担や出産への不安などで、産後であれば頻繁に授乳やミルクをあげるため、睡眠をとることが難しいという方もいらっしゃるかもしれません。睡眠不足は体の回復を遅らせてしまいます。無理をせず、周囲のサポートを借りながら、できるだけこまめに休息をとるよう心がけましょう。
また、栄養バランスのとれた食事は身体の回復をサポートします。毎日毎食は難しいかもしれませんが、サプリメントを活用しながら、できるだけバランスのとれた食事をとりましょう。

そして、産後はホルモンバランスの変化に伴い、メンタル面の不調が起こりやすい時期です。情緒不安定になったり、涙もろくなったりすることもあるかもしれません。
家族や友人など、周囲の人に相談して1人で抱え込まないようにしましょう。
メンタル面の不調がある場合は、無理せずに時期を改めて体のケアを始めるといいでしょう。

まとめ

産前から産後にかけて、忙しい日々に追われてなかなか自分の身体に目を向けられないかもしれません。妊娠・出産の身体への負担は大きいため、ご自身の身体も少し意識してみましょう。

効率的にインナーマッスルを鍛え、健康的な身体を手に入れるためには、専門的な知識を持った人へ相談するのがいいでしょう。
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この記事の監修
木野産婦人科医院 院長 木野 秀郷
木野 秀郷
木野産婦人科医院 院長
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