不妊症とは、『妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないもの』を言います。日本産婦人科学会では、一定期間を1年間と定めています。当院の不妊治療はタイミング法のみ対応しております。
不妊症とは
不妊症とは、妊娠を希望している生殖年齢の男女が一年以上避妊せず夫婦生活を行なっているにもかかわらず、妊娠しない場合を指します。医療介入なしには妊娠が不可能または非常に困難な場合には、期間を問わず不妊症と診断されます。妊娠を希望するカップルの10~15%が不妊と考えられています。
不妊症では女性側と男性側に原因があり、男性因子33%、女性因子64%(卵巣因子21%、卵管因子20%、子宮因子18%、免疫因子5%)、その他4%という調査結果があります。不妊症が考えられる場合には男女ともに検査を受けることが望ましいです。
当院では男性不妊の検査・治療を行っておりませんので、男性不妊の診療を行っている婦人科・泌尿器科にご受診ください。
不妊の原因
不妊には男性因子と女性因子があって、女性因子には排卵因子と卵管因子、子宮因子、頸管因子、免疫因子などがあります。
男性の不妊症の原因は、造精機能障害、性機能障害、精路通過障害があります。
不妊の原因は多くの因子が原因であったり、検査をして異常がない原因不明不妊のものもあるのです。
排卵因子
月経周期が25日〜38日型で、基礎体温が二相性であれば問題ありませんが、月経不順の場合や、基礎体温が二相性でない場合は無排卵の可能性があるので、産婦人科で相談しましょう。
排卵障害の原因は様々ありますが、男性ホルモンが多く分泌されることで起こる多嚢胞性卵巣症候群や乳汁分泌をさせるプロラクチンというホルモンが多く分泌される高プロラクチン血症などがあります。
また、女性の体は繊細なところもあるので、環境の変化やストレス、短期間での急激な体重減少などのダイエットによる影響でも月経不順になることがあります。
更に、通常50歳前後で迎える閉経が20代や30代など若い年齢にもかかわらず、卵巣機能が低下し無排卵となる早発卵巣不全も不妊症の原因になります。
卵管因子
卵管の狭窄や閉塞、癒着によって通過障害が起こってしまう場合です。
性器クラミジア感染症は女性の場合症状がないため、気がつかないこともありますが、かかってしまうと、卵管の閉塞や癒着の原因になることがあります。
また、子宮内膜症による卵管周囲の癒着や虫垂炎など骨盤周囲の手術を受けた場合も、癒着してしまうことがあります。
子宮因子
子宮筋腫の中でも子宮の内側にできてしまう粘膜下筋腫は、受精卵の子宮内膜への着床を阻害することがあるため、不妊の原因になります。
また、子宮筋腫は着床を妨げるだけではなく、精子の侵入を阻害してしまうこともあるのです。そして、子宮内膜ポリープも着床障害の原因になります。
頸管因子
排卵前になると透明で伸びる帯下(おりもの)が出ますが、こ頸管粘液量が少ない場合は、精子が子宮内へ侵入しにくくなるため、不妊になります。原因は子宮頸管の炎症や子宮頸部の手術などがあります。
免疫因子
何らかの免疫異常で精子を障害する抗精子抗体をつくってしまう女性では、精子の運動率がよく問題がなくても、精子の通過を妨げてしまいます。
また、受精においても精子と卵子が結合することを阻害するため、不妊の原因となります。
造精機能障害
男性の精子は精巣(睾丸)で作られますが、精子の作られる過程や、成熟過程で異常があると、精子が少なくなる、奇形率が高くなるなど受精する能力が低下してしまいます。
原因は様々ありますが、精巣にある血管が拡張する精索静脈瘤の場合、外科的治療で精液検査の所見が改善する可能性があります。
原因不明のケースも多いため、漢方薬やビタミン剤の内服で治療を行います。
精路通過障害
精巣内で精子が作られているのに精液中に精子が出てこない、閉塞性無精子症があります。
代表的な疾患は、小児期の鼠径ヘルニア手術や精巣状態炎後の炎症性閉塞です。
その場合は、精巣内にある精子を回収して顕微授精を行なったり、閉塞した精路を再建する治療を行うことで、妊娠が期待できます。
性機能障害
性機能障害には勃起が起こらず性行為ができない勃起不全と射精ができない射精障害があります。
最も多いのは心因性と言われていて、性行為にプレッシャーを感じてしまい勃起障害になってしまうケースもあります。
不妊の検査について
不妊の検査には様々なものがあり、基礎体温での確認からホルモンバランス検査、超音波での検査、精液検査、卵管造影検査などがあります。
不妊の原因がわかれば、原因に応じて治療を進めていくので、検査をすることはとても重要です。
基礎体温
基礎体温は朝起きてすぐ、動く前に体温を測るものです。通常の体温計とは異なり、基礎体温を測る体温計は小数点第2位まで測定されるので、より体温の変化がわかりやすいです。基礎体温は起床時すぐに舌下で測定します。
排卵前の低温期、排卵後の高温期が二相にわかれているのが理想です。高温期が短いと黄体機能不全、二相にわかれていない場合は無排卵の可能性があります。
ホルモンバランス検査
ホルモンバランス検査は、血液検査で女性の体から出るホルモンが正しく分泌されているかを確認します。
排卵前の血液検査、排卵後の血液検査と時期によって見られるホルモンが異なるので、1回の周期で何度か採血をし、ホルモンの値を確認します。
ホルモンの基礎となるFSH、LH、E2は月経中(月経2〜5日目)に測定します。排卵近くになると卵巣の機能を正しく評価できないからです。
FSHは卵胞の成長を促すホルモンで、卵胞が発育するとE2が徐々に増えます。
E2がピークを迎えるとLHサージが起こり、LHサージ後24〜36時間以内に排卵が起こると言われています。
ホルモンバランスの検査費用は病院により異なりますが、基本的には自費での検査になるので、1万円(税込)前後のことが多いです。
検査は婦人科で受けることができます。不妊治療専門のクリニックであれば、より多くの項目を確認することができます。
超音波検査(エコー検査)
女性の場合は経膣超音波検査と経腹超音波検査がありますが、子宮や卵巣を確認するために経膣超音波検査を行うことが一般的です。
経膣超音波検査で子宮筋腫がないか、卵巣の腫れがないかなどの確認を行います。
子宮筋腫も場合によっては不妊原因となり、手術で子宮筋腫をとる必要があるため、超音波検査の後MRI検査を行うこともあります。
経膣超音波検査は、性交渉の経験がない場合は痛みを感じる方もいるでしょう。
不妊治療について
不妊治療のスケジュールは夫婦の年齢や不妊原因により様々です。不妊治療の方法は以下のとおりです。
タイミング法
タイミング法は初期の不妊検査で異常が見られない症例に対して行われます。治療費用が安価であり、1回の周期で何度か行えること、また非侵襲的であることがメリットです。
一方で、子宮内や受精の場所である卵管まで精子が到達したかどうか評価できないことがデメリットです。
回数について
妊娠のための性交渉は多すぎても少なすぎてもいけません。毎日すると精子の産生が追いつかないことがあります。また少なすぎると精子が古くなり、受精能力が低下してしまいます。
排卵が近づいてくるタイミングで1回、排卵検査薬で陽性が出る時に1回、排卵検査薬で陽性が出た数日後に1回の3回程度であればいいでしょう。
何周期で妊娠するのか
年齢によって回数は異なりますが、若い方であれば6回程度、高齢であれば3回程度行います。自然周期で行う場合と、排卵誘発をする場合があります。妊娠する場合は6回までのことが多いです。6回タイミング治療をして妊娠しなかった場合は、ステップアップすることになります。