RSウイルスは生涯に通して何度も感染するウイルスですが、生後間もない赤ちゃんが感染してしまうと、重症化のリスクが高くなります。
現在、RSウイルス感染症に対する特効薬は無いため、ワクチンによる事前の対策が重要です。
妊娠中に接種可能なワクチンがございますので、生まれてくる赤ちゃんの為にも、是非接種をご検討ください。
RSウイルスワクチンとは
RSウイルスワクチンとは、RSウイルス感染を予防するためのワクチンです。
妊婦さんへの接種が可能なワクチンについては、2024年に承認され、RSウイルス感染による重症化リスクを軽減する目的で開発されました。
比較的新しいワクチンですが、妊娠中に接種することで、生まれてくる赤ちゃんへ免疫が移行し、生後6ヶ月ごろまでの重症化を防ぐことができると言われています。
RSウイルス感染症とは
RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。世界中で感染が確認されている病気で、1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の子どもが少なくとも1回以上感染すると言われています。
RSウイルス感染症の症状
典型的な症状は以下のとおりです。
- 発熱
- 鼻汁
- 咳
- 喘鳴(ヒューヒュー音がする)
軽い風邪の症状から、重症な細気管支炎や肺炎まで、症状の程度はさまざまです。
特に初めて感染した場合、約70%は発熱や鼻汁など風邪症状のみで数日のうちに軽快しますが、約30%では咳が悪化し、呼吸困難や喘鳴などが現れます。
発症までの期間
RSウイルスに感染してから2〜8日、典型的には4〜6日の潜伏期間を経て、鼻汁や発熱などの症状がみられます。
RSウイルス感染症の流行時期と感染経路
RSウイルスは春から初夏にかけて増加がみられ、夏頃にピークがみられます。2020年までは夏から増加傾向となり、秋にピークがみられていたため、傾向が変わっています。
感染経路は主に接触感染と飛沫感染です。接触感染は、RSウイルスに感染している人との接触、感染者が触れたもの(ドアノブや机、イス、おもちゃ、コップや食器など)を触ったり、なめたりすることで感染することを言います。
飛沫感染は、RSウイルスに感染している人が咳やくしゃみをした際に口から飛び散る飛沫を浴びたり、吸い込んだりすることにより感染します。
重症化しやすい年齢・基礎疾患
とくに6ヶ月未満の感染には注意が必要です。また、高齢者や呼吸器疾患などの基礎疾患がある方も感染に注意しましょう。重症化するリスクの高い基礎疾患がある子どもも注意が必要です。とくに早産で生まれた赤ちゃんや心臓や肺に基礎疾患がある、免疫不全や神経・筋肉の疾患がある子どもは注意しましょう。
RSウイルスワクチン「アブリスボ」について
RSウイルスワクチンの必要性について解説しましたが、ワクチンの副反応はどの程度あるのか、赤ちゃんへの影響はないのかなど不安になる方もいるかもしれません。
ここからはよくある疑問について解説します。
ワクチンの副反応はある?
報告されている主な副反応は接種部位の痛み(40%)、筋肉痛(26.5%)、赤みや腫れ(10%未満)でした。
頭痛や倦怠感などの症状は他の予防接種と同様だと言われています。
赤ちゃんへ影響はある?
日本産科婦人科学会によると、長期的な子どもへの影響など現時点では不明な部分もありますが、早産や低出生体重児(2500g未満での出生)になるなど赤ちゃんへの影響はないと報告されています。
そのため、RSウイルス感染予防に効果的と言えるでしょう。
接種時期の目安は?
アブリスボは妊娠24週〜36週まで接種が可能ですが、妊娠28週移行で接種した方が、予防効果が高かったという報告があります。
そのため当院では、妊娠28週〜34週までの接種が推奨しております。
ワクチン接種を希望される場合は、主治医と接種時期を相談しましょう。
ワクチン接種はどこでできる?
アブリスボは比較的副反応の少ないワクチンですが、予期せぬ状況にも対応できるよう、産科での接種がおすすめです。
当院でもアブリスボの接種が可能ですので、接種を検討されている方はぜひご相談ください。
基礎疾患や合併症などがある場合、接種可能かどうか事前に確認が必要となりますので、かかりつけ医に相談してから接種に臨んでください。
当院でのワクチン接種について
当院では、当院通院中の妊娠24週~36週の妊婦さんを対象に、ワクチン接種を実施しております。
対象 | 当院通院中の妊娠24~36週の妊婦さん 接種おすすめ時期は妊娠28~34週です。この時期の接種は有効性が高い傾向がみられます。 |
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料金 | 33,000円(税込 / クレジットカード利用可) |
接種回数 | 1回/0.5ml 筋肉注射 |
ご予約方法 | ご希望の方は院内設置してあるパンフレットの申し込み用紙をお持ちください。 Web、電話での予約・受付はしておりません。 |
備考 |
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妊娠中にRSワクチン接種が必要な理由
RSワクチンは高齢者と妊婦さんが対象のワクチンです。妊婦さんにRSワクチンの接種が必要な理由は主に四つあります。
- 妊娠中に接種することで生後6ヶ月までの免疫獲得ができる
- 生後早期から予防が必要である
- 現行のRSウイルス感染症の薬は使用条件が決められている
- 兄弟・姉妹から感染する可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
妊娠中に接種することで生後6ヶ月までの免疫獲得ができる
妊娠中にワクチンを接種すると、胎盤を通じて抗体が赤ちゃんへ移行します。その結果、RSウイルスが原因となる気管支炎や肺炎などの下気道疾患を予防します。
ワクチン接種は、お腹の中にいる間から赤ちゃんを守れる方法です。
生後早期から予防が必要である
RSウイルス感染は生後1歳までに約50%以上が感染し、生後6ヶ月未満で感染すると重症化する可能性が高いと言われています。
合併症として、無呼吸や急性脳症があり、後遺症として気管支喘息があります。日本では、毎年約12万〜14万人が感染し、そのうち約3万人が入院を必要すると推定されています。しかし、RSウイルス感染症の有効な治療薬はありません。(2025年6月現在)
RSウイルス感染による入院発生数は、月齢別では、生後1〜2ヶ月時点で入院ピークとなるため、生後早期から予防が必要です。
生まれてすぐの赤ちゃんは非常に抵抗力が弱いですが、生まれてすぐにワクチンを打つことはできません。その為、感染症にかかりやすいと言われています。
生まれた赤ちゃんを守るためにも妊娠中からワクチン接種が推奨されています。
現行のRSウイルス感染症の薬は使用条件が決められている
2025年6月現在、RSウイルス感染症の特効薬はありません。発熱や咳など症状を抑えるための薬はありますが、直接効く抗ウイルス薬はありません。
現在、使用可能な重症化抑制薬は、早産児や基礎疾患がある子どもに限定されています。
そのため、RSウイルスに感染しないよう、予防が非常に大切です。
兄弟・姉妹から感染する可能性がある
兄弟姉妹がいる家庭では、RSウイルスの感染リスクが高まるといわれています。
とくに保育園や幼稚園に通っている子どもがいる場合、集団生活の中でRSウイルスに接触する可能性が高く、それを家庭内に持ち込んでしまうケースも少なくありません。
生まれたばかりの赤ちゃんは免疫が未熟で、RSウイルスに感染すると重症化しやすいことが知られています。
兄姉が元気であっても、軽い風邪のような症状でRSウイルスを赤ちゃんへうつしてしまうこともあるため、注意が必要です。
兄弟・姉妹がいる家庭では、妊娠中のRSワクチン接種がより重要になります。
よくある質問
ここからはRSワクチン接種に関するよくある質問について解説します。
RSワクチンは日本だけでなく、欧米でも多くの妊婦さんが接種し安全性が確認されています。また、赤ちゃんへの影響もありません。
ワクチン接種後の副反応も軽度と言われているため、安心して受けていただけます。
RSワクチン接種に関する不安や疑問があれば当院までご相談ください。
接触感染予防として、流水・石けんでの手洗い、アルコール製剤による手指消毒が大切です。子どもがよく触れるおもちゃや手すりなどはこまめにアルコールや塩素系の消毒剤で消毒しましょう。
また、飛沫感染対策としては咳や鼻水などの症状がある場合、マスク着用できる年齢の乳幼児ではマスクを着用、大人はマスクを着用することも大切です。
まとめ―RSワクチンで赤ちゃんを早期に守りましょう
RSワクチンはRSウイルス感染症の重症化を予防するための大切なワクチンです。生後6ヶ月未満の赤ちゃんは抵抗力が弱く非常に感染症にかかりやすい時期です。
従来は新生児への予防手段が限られていたRSウイルス感染症ですが、アブリスボの開発により、生まれる前から赤ちゃんを守ることが可能となりました。
赤ちゃんを守るための手段が増えたことは、非常に意義のあることです。
RSワクチン接種に興味のある方、検討中の方はぜひ一度当院までご相談ください。